がん看護における具体例を紹介

がん看護においての緩和ケアでは、人によって様々なケアが行われます。特に終末期を迎えた患者さんやそのご家族のケアには、患者さんの死後、残されたご家族に影響がでる可能性がある為、重要になります。

具体例を挙げると、終末期を迎えた女性患者は夫と2人の息子の4人家族でした。夫との仲は良く、長男も面会に訪れていましたが、ちょっとした行き違いで不仲になった次男は一度も面会に来ていない状態でした。状態が悪化していくにつれ、食欲が低下。患者さんは夫の料理を食べたがっており、夫は毎日料理を作りに面会に訪れていました。スタッフは患者さんの状態を見て、夫への愛情が食べたいと思う気持ちを呼んでいるとわかり、夫には患者さんの状況を話し、それに合わせた食事を作るようになりました。

また、身だしなみも整えられない程悪化した時も、夫の前ではきれいでいたいという患者さんの思いを大事にし、洗顔や保湿、口腔ケアなどを丁寧に行いました。スタッフと夫とのコミュニケーションの中で信頼関係が作られたと思った時点で、次男の事を切り出し、夫の努力で面会が叶いました。

結果最期は、家族全員が揃い看取ることができました。その後のエンゼルケアで、全身を綺麗に整え、夫とショッピングに行った際に、夫に買ってもらった洋服を着せました。帰る際には、夫から丁寧なお礼の言葉を貰い、大切な人を見送る事への喪失感が軽減されたと考えられました。

この例のように、時として家族の問題にまで介入していく事で、見送る側の喪失や悲嘆の軽減にもつながります。また、その為には患者さんやご家族との信頼関係を築く事が最も大切です。